解雇以外の労働契約の終了について
会社と従業員の労働関係が終了する原因は、解雇だけに限りません。
解雇以外の原因で労働契約を終了させる典型的な場面が「辞職」です。
これ以外にも、「定年退職」や「期間の満了」、使用者と被用者の合意によって労働関係を解消させる「合意解約」もあります。
このように、解雇以外にも労働契約を終了させるパターンがいくつかあるので、以下で説明をします。
解雇以外の労働契約終了原因
会社と労働者は、労働契約(雇用契約)という契約関係にあります。労働関係を終了させるということは、この契約の効果をなくすことです。
「解雇」は、使用者の方から一方的に労働契約を将来に向けて解消することです。
辞職
辞職は、従業員の方から一方的に労働契約を解消することです。一般的には退職と呼ばれることもありますが、退職は定年退職なども含むので、辞職よりも広い概念です。
雇用関係がある場合、すでに労働契約が成立しているわけですから、いつでも労働者の都合で辞職できるものではありません。
辞職の要件は、労働契約に期間の定めがあるかどうかで異なります。
期間の定めのない労働契約の場合、辞職するときには、辞職日の2週間以上前に雇用者に対して通知しなければなりません(民法627条1項)。
期間の定めのある労働契約の場合には、基本的に途中で辞職することはできません。辞職できるのは、やむを得ない事由があるケースのみです。
合意解約
合意解約は、使用者と労働者双方の合意によって、労働契約を将来に向けて解消することです。
当事者双方が契約解消に合意しているので、基本的に制限はありません。
期間の定めがない労働契約だけではなく、定めのある労働契約であっても自由に解消することができます。
定年(定年退職)
定年退職は、労働者が一定の年齢に達したときに、自動的に労働契約を終了することです。あらかじめ、定年退職制度が社内で規定されているときに有効です。
定年退職制度がある場合には、期間の定めのない労働契約であっても定年に達したら自動的に退職します。
定年退職制度を導入する場合、定年は最低60歳となります。
期間の満了
期間のある労働契約の場合には、期間が満了することによって、労働契約が解消されます。
ただし、有期契約社員であっても、継続して雇用しなければならないケースもあります。
何度も契約を更新してきた場合などには、期間の終了時に更新をしない「雇い止め」が認められないからです。
また、2013年における労働契約法改正により、有期雇用の社員であっても、継続的に雇用されて勤続年数が通算5年を超えると、無期契約の社員に転換することができることとされています。
以上のように、解雇以外の労働契約終了原因にも、いろいろなパターンがあります。トラブルが起こってしまったら、労働問題を取り扱っている弁護士に相談をすると良いでしょう。
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