不当解雇で慰謝料を請求できる?
会社から解雇されて不服がある場合には、「不当解雇」として争うことができる可能性があります。
不当解雇されたら、当然精神的にも大きな苦痛を受けることになりますが、会社に対し慰謝料請求することはできるのでしょうか?
今回は、不当解雇で会社に慰謝料請求できるのかどうか解説します。
不当解雇でも慰謝料が発生する
不当解雇されたとき、慰謝料が発生するのでしょうか?
慰謝料とは、加害者の不法行為によって精神的苦痛を受けた場合に、被害者がその慰謝のため請求できる損害賠償金です。
不当解雇は違法ですし、通常労働者は理由なく解雇されたことにより大きな精神的苦痛を受けることになりますから、不当解雇のケースでも慰謝料が発生する可能性はあります。
ただし、不当解雇されたとき、必ず慰謝料が発生するとは限りません。
慰謝料が発生するのは、不当解雇の態様が悪質で被害者が受けた苦痛が特に重大であったというような場合に限られます。
多くの事案では、会社から未払賃金の支払いを受けることにより、精神的苦痛についても満足を受けたとされます。
慰謝料と未払賃金との違い
不当解雇を受けたとき、会社に請求できるお金は慰謝料だけではありません。
未払賃金も請求することが可能で、むしろこちらの方が高額になる傾向があります。
未払賃金とは、解雇が無効であることを前提に支払われるはずの給与です。
会社は、労働者を解雇すると当然給料を払わなくなりますが、解雇が無効なら本来は給料を支払わなければなりません。
そこで労働者側としては、未払賃金を請求することができるのです。
これについては、会社が法律上、当然支払わなければならないものですから、解雇の効果を争う場合、必ず請求することができます。
そして、慰謝料はこうした未払賃金とは別に請求をする、精神的苦痛に対する賠償金です。
慰謝料と未払賃金は混同されることも多いので、正しく理解しておきましょう。
未払賃金
解雇後の未払の給与。不当解雇の場合、必ず請求できる
慰謝料
不当解雇されたことによって受けた精神的苦痛に対する賠償金。不当解雇されても発生するとは限らない
不当解雇の慰謝料の相場
不当解雇されたときの慰謝料の相場は、どのくらいになっているのでしょうか?
これについては、ケースによっても異なりますが、大体30万円~150万円くらいです。
たとえば、以下のような裁判例があります。
会社が勧誘して、競合他社から引き抜いて採用した従業員を、3ヶ月ほどで解雇した事案では、150万円の支払いが命じられました(東京地裁平成21年1月30日)。
また、従業員が退職金の減額を受け入れずに労働基準監督署に相談をしたことによって解雇された事案があります。
このケースでは、会社は従業員を整理解雇しましたが、実際には従業員を解雇した翌日に別の人を雇い入れていたという事情もありました。
この事案では、会社に対し、慰謝料100万円の支払いが命じられています(東京地裁平成18年11月29日)。
証拠もないのに従業員が横領したと決めつけて、そのことを取引先に公表した事案では、慰謝料として150万円の支払いが命じられています(大阪地裁平成11年3月31日)。
以上のように、不当解雇で慰謝料が認められるのは、通常の事案と異なる事情があり、労働者が受けた精神的苦痛が特に大きいケースに限られます。
ただし、請求できることももちろんありますし、慰謝料を請求できないとしても未払賃金を請求できるのは当然なので、不当解雇されたら、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。
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