解雇の種類とは?
ひと言に「解雇」といっても、いくつかの種類があります。
普通解雇、整理解雇、懲戒解雇、諭旨解雇に分類することができ、それぞれ要件が異なります。
以下では、それぞれの解雇について、説明をします。
普通解雇
普通解雇は、整理解雇や懲戒解雇に該当しない場合の原則的な解雇です。
従業員の勤務態度が悪い場合や能力不足などを理由として行われる解雇で、たとえば無断欠勤や頻繁な遅刻がある場合などに検討されます。
ただし、無断欠勤をしたからすぐに解雇、というわけにはいきません。
解雇は、法律的に認められないケースがあります。たとえば、差別的な解雇や、労働基準監督署に通報したことによる解雇などはできません。
また、解雇が認められるためには解雇権濫用とならないよう、解雇をするだけの合理性と社会的相当性が必要になります。解雇権濫用となった場合、労働者は解雇無効を主張して争うことができます。
さらに、解雇には手続き的な規制もあります。解雇をするためには、30日以上前に解雇予告をするか、30日に足りない日数分の解雇予告手当を支払うことが必要です。
整理解雇
整理解雇は、会社の経営状態を理由とした解雇です。業績が悪化したために、従業員を維持していると将来の経営が逼迫することが明らかなケースなどにリストラを行うものです。
整理解雇が有効になるためには、最高裁判所が採用した「整理解雇の4要件」を満たす必要があります。
整理解雇の4要件
・人員削減の必要性がある
・解雇回避の努力をした
・解雇対象者の人選に合理性がある
・労働者へ十分な説明を行い、協議をした
ただし、近時の判例では、すべての要件を満たしてない場合でも、4つの要件を総合的に考慮することによって解雇を認める例が増えています。
懲戒解雇
懲戒解雇は、従業員に非行がある場合に制裁罰として行われる解雇です。
会社が就業規則で懲戒事由を定めているケースで適用されます。
懲戒解雇が行われる場合には、解雇予告や解雇予告手当の支給が行われないことが多いです。
ただ、会社が解雇予告等を免れるためには、労働基準監督署に対し「解雇予告除外認定許可」を申請する必要があります。
これを怠ると、たとえ懲戒解雇でも、解雇予告または解雇予告手当が必要です。
また、会社が懲戒解雇をするためには、就業規則に懲戒規定があって、その中の懲戒事由に該当することが明白であり、かつ社会通念上解雇が相当であることが必要です。
非行に対し解雇という処分が重すぎると、懲戒権の濫用となって、懲戒解雇は無効となります。
そのため、懲戒解雇であっても、そう簡単に認められるものではありません。
一方、懲戒解雇が有効になると、退職金も全部または一部を不支給とすることも可能なので、従業員にとっては非常に不利益が大きくなります。
諭旨解雇
諭旨解雇は、労働者の責任が業務に支障が発生したり会社に損害が発生したりしたとき、懲戒解雇を避けるため、会社と労働者が話合い、両者納得のうえで労働関係を終了させることです。
懲戒解雇になると、退職金も全部または一部が支給されませんし、解雇予告手当も支給されないことが多く、労働者にとって不利益です。
そこで、在籍期間が長い従業員や功績のあった従業員に対しては、諭旨解雇という形をとり、退職金や手当の支給を行います。
以上のように、解雇といってもいろいろな種類があります。
ケースに応じて、適切な手段を選択しましょう。
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