解雇に関する規定は必要?
労働基準法では、10人以上の従業員がいる事業所では就業規則を作成しなければならず、就業規則には解雇事由を定める必要があるとしています。
ここで、具体的な解雇事由を定めていないと、どのような問題があるのでしょうか?
以下では、会社や事業所において解雇に関する規定が必要かどうか解説します。
法律上、解雇に関する規定が必要な場合と不要な場合
労働基準法89条は、「常時10人以上の従業員がいる事業所では、就業規則を定め、行政官庁に届け出なければならない」と規定しています。
そして、就業規則には「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」を定める必要があります。
そこで、多くの会社では就業規則を作り、従業員の解雇に関して明らかにしておかなければなりません。
ただ、どこまで細かく退職に関する事由を定めるかは会社の任意ですから、詳細には定めないケースもあります。
また、従業員が9人以下の会社では、そもそも就業規則を作成する必要がないので、解雇事由についても定める義務はありません。
解雇に関する規定がなくても普通解雇は可能
もし、会社が解雇に関する規定をしていない場合、会社は従業員を解雇することができないのでしょうか?
そのようなことは、ありません。解雇は法律上、会社に当然に認められる権利だからです(民法627条)。
ただ、普通解雇が認められるケースは非常に限定されています。単に従業員の勤務態度が悪いとか、他の労働者よりも能力が低いという程度では解雇できず、解雇が認められるだけの合理的理由と社会的相当性が必要だからです。
いったん無期限で労働者を雇用すると、普通解雇をするのは非常に困難です。
解雇に関する規定がないと懲戒解雇はできない
普通解雇ができなくても、従業員が懲戒事由に該当する場合には懲戒解雇ができるものです。しかし、解雇に関する規定がない場合には懲戒解雇をすることができません。
懲戒解雇をするためには、就業規則に懲戒規定をおき、その中に懲戒事由を定めていて、労働者がその懲戒事由に該当することが必要になるためです。
たとえ従業員が会社に背信行為をしたり、犯罪を犯したりしても、就業規則内に解雇に関する懲戒規定をおいていないと懲戒解雇することができません。
普通解雇しかできないので、普通解雇の要件に該当する必要がありますし、解雇予告や解雇予告手当も必要になってしまいます。
また、普通解雇できる場合についても明確にしておくと、従業員にもルールがわかりやすくなりますし、スムーズに解雇をしやすいです。
そこで、会社に就業規則の作成義務がないケースでも、懲戒に関する制度を中心として解雇に関する規定は作っておく必要があります。
なるべく広く解雇事由を定めよう
就業規則で解雇に関する定めを作る場合には、どこまで細かく解雇事由を定めるかが問題です。
この点、就業規則に解雇事由を挙げると会社がその事由によって解雇できると同時に、それ以外の事由によっては解雇できないということも明らかになると考えられています。
そこで、就業規則を策定するときには、なるべく細かく定めておく必要があります。
なるべく広く解雇該当事由を拾い、最後に「その他前記事項に準ずる理由」という一般的な解雇事由を入れておくことが一般的です。
今回は、解雇に関する規定を作る必要性について解説しました。
規定を作っておかないと、普通解雇はできても懲戒解雇ができません。
社内のルールを明らかにするため、従業員の人数が少なくても必ず解雇に関する規定を作っておきましょう。
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